変えるヒト、変わるヒト。-新しい社会貢献のカタチ-

転機

 悶々とした日々をすごす岩切は、ふと、大学3年時に出会ったあるシングルマザーのことを思い出していた。それは、彼の転機といってもいい出会いだった。看護士として働くこのお母さんは土日出勤もすることがあり、悩みがあった。

「2人の子どもを土日に預かってくれる場所がないし、本来父親が体験させてあげるようなことを体験させてあげられていない。」

 これを機に岩切は子どもたちをつれて近所の川の土手で遊ぶようになる。これにはシングルマザーのお母さんは大喜びだった。自分が子どもたちと遊ぶなかで、現場にはいろんな悩みや困ったことがあり、ニーズを体当たりで感じるようになっていく。

大学院を卒業した後には、就職活動もおこなった。そのなかでこれから自分が時間をかけてやっていくべきことは何かという迷いもあり、とにかく様々な会社をまわり、多くの企業から内定までいただいた。内定を得たなかで、頭をよぎったものは子どもたちの存在だったと彼はいう。

「子どもたちには、責任を持って物事に取り組むようにと日々伝えてきたんです。でも、就職して別の生き方をすることで目の前の活動を辞めてしまうことは、僕が子どもたちに教えてきたことと矛盾するのではないかと思いました。子どもたちから、岩切は矛盾してる!なんていわれたくなかったですからね」

ずいぶん回り道をしてきた。でもその回り道をしたからこそ気づくことがある

就職活動を通じて、企業でも地域社会でも、求められている人材像は同じ。それは、目の前の問題に周囲と手を取り合いながら、根気よく課題解決に取り組んでいく存在が必要だということ。そういう意味で、自分が育てていこうとしている子どもたちの「社会性」こそ、将来的にも社会にとって非常に重要なことだという確信を持っていた。

 岩切は高度なマーケティングテクニックや経営論などの方法論から起業した社会起業家ではない。「大学時代は起業なんて考えたこともない」と彼は常に語っている。むしろ彼自身が現場に入り、現場の目線で目の前に存在する様々な悩みや苦しみに気づき、向き合ってきた。その過程では、「もっと自分を必要としている人がいるのではないか」と考えるようになると同時に、個人だけで活動を続ける限界を感じ出したのもこの時期だ。ついに決心をし、これらの問題に組織としてむきあっていこうと決めたのだった。高校時代の仲間とともに大学在学中に立ち上げた任意団体夢職人は、2008年NPO法人となり、大きな成長への一歩を踏み出すこととなった。

岩切準さんから、あなたへのメッセージ

特定非営利活動法人 夢職人
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