変えるヒト、変わるヒト。-新しい社会貢献のカタチ-

将来への道

 明確化されたミッション、ビジョンによって大きな成長を遂げてきたNPO法人 夢職人。今後はどうなっていくのだろうか。夢職人の活動を、まずは江東区内全域に広げていくことがビジョンの一つだと岩切は語る。また、同時にほかの地域への水平展開も視野にいれている。そこには、質の高い社会教育プログラムをつくり続け、多くの子どもたちの成長に寄与したいという強い意志が感じられる。そのためにも、通常は競合と位置づけされる団体に対しても、同じ問題意識をもっているならば手をとりあいたいと考えている。なぜなら、問題が早く解決されることこそが、目指す最大のゴールだからだ。
  
「いま、私たちが教育をしている子どもたちが、いつしか次は教育をする側になっていきます。良き教育が循環していくことでそのコミュニティの良き社会や文化が創り出されていきます。子たちが大人になったときに、社会の中で活躍をしていくことのできる力を育めるコミュニティは、必ず豊かになっていきます。私たちは、地域社会にそういう教育の循環を起こしていきたいと思います。」

エピローグ

 取材中に何度も感じたことがある。それは「行動をおこすこと」の大切さだ。いつからか世の中には情報があふれ、必要なものはそのほとんどをインターネットで簡単に手にいれられるようになった。同時に、「常識」という一種の固定概念が人の心を覆いつくすスピードも早くなり、全員が同じ方向をむかないと間違っているような気風が強くなっている気がしてならない。

岩切は取材中何度かこの言葉を口にした。

「まず、やることが大事なんです。」

 知識やスキルは方法論にすぎず、目の前で問題を目の当たりにしてみる。そうやって行動をしてから必要なことを学んでいくことが大事なのだと彼は語る。大人の学び方とは、まずアウトプットをすること。インプットには際限がない。アウトプットをしてから、インプットをする方が足らない部分が見えてくるし、成長感がある。それはすなわち、「必要なことは何か」ということを知るためには、まずは行動を起こしてみることが必要不可欠なことだということである。

最後に岩切はゆっくりと語りかける。

「世の中でおかしいな、変だなって思うことは誰でもあると思います。でも、同時に、変わらないだろうっていう思いが心のどこかにあるのではないでしょうか。」

この社会を構成しているのは自分自身だという事実。この当たり前の事実を大切にできるかどうか。彼は信じている。「社会は自分自身で変えることができるものだ。」と。誰でもアクションをとることができるのだ。もちろん、「それは無理だ。」という人達も少なくない。そういった人々は、変えられない理由なら10も20も考えてくる。でも、解決策の1つも考えてくることはしない。変えたいものがある。だから、変えるための方法を考える。社会を変えられると本気で信じる人こそが本当に社会を変えることができる。そして、まずは行動をおこすことが何よりも重要なのだ。岩切の瞳は静かに語りかけていた。

地域社会における教育の循環。江東区で始まった一人の若者の想いと挑戦は、江東区で育ちゆく次世代の子どもたちの心に、いま確かにひろがりはじめている。

「今度はキミが、子どもたちのためにいつか同じことをしてあげなさい。」

いつの日か岩切を優しく包んだこのコトバは、彼の夢とともに確実に次の世代に紡がれている。

岩切準さんから、あなたへのメッセージ

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[ 取材:桑原 撮影:前田 ]